もう一つの中華・台湾 台湾のゲームとヒトの安心感、日台連携の可能性:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第7回

 黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 
  公開日時 

 著者:黒川文雄 

「日本語、まだ、うまくないけど4日間がんばる!」

幕張メッセ・アネックスの東京ゲームショウインディーズブースに出展していたHayato Yang(以下:ハヤト)さんは、自身が開発したVRゲーム「STARWAY VR」のデモ画面を前にして私にそう言いました。

もう一つの中華・台湾 台湾のゲームとヒトの安心感、日台連携の可能性:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第7回

「STARWAY VR」は、宇宙で遭難したプレイヤーが自分で作ったミニ探査船を操縦して宇宙空間を探検し、さまざまな障害をクリアしていくVRアドベンチャーゲームです。私がブースを訪れた初日は展示機にバグがあり体験することができませんでしたが、ハヤトさんは宿泊するホテルで深夜に及ぶ復旧作業を実施、バグを修正して翌日からの出展を乗り切りました。

ハヤトさんは台湾のゲーム会社のクリエイターでしたが、VRコンテンツの可能性を信じて独立、ファイナンスから開発までをすべて一人でやっています。

今後の予定は、「STARWAY VR」のSteam版をリリース、その後、PSVR版もリリースしたいとのことです。

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ハヤトさんが出展していたインディーズブースとは別に、台湾パビリオンも設けてあり、そこにはメイドイン台湾のゲームコンテンツが多く展示され、遊べる環境でした。台湾ゲームには良質な物が多く、もっと多くの日本のゲームファンに触れてほしいと思います。

湾で見た良質なゲームと日台連携の可能性

ハヤトさんと私が初めて会ったのは、今年の8月上旬に参加した台湾ゲームデベロッパーズフォーラム(以下:TGDF)です。

TGDFは台湾版GDC(サンフランシスコで開催されるゲームデベロッパーズカンファレンス)のような内容で、3日間のプログラムのなかでスマートフォンゲーム、PCゲーム、VRゲーム、オンラインゲームやコミュニティサイトに関しての企画、開発、運営、データ分析などのナレッジを共有しあうというものです。

セッション自体は中国語で行われるため、我々日本人にとっては理解するには、ややハードルが高いものですが、総じて台湾人は英語も日本語もどちらともある程度話せるためコミュニケーションに窮することはありませんでした。

またTGDF事務局も私たちの参加や取材を歓迎してくれ、現在の活動内容は今後の方針、さらには日本のゲーム産業やクリエイターたちとの協業や技術共有の可能性などを協議することができました。

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台湾で試遊した主なコンテンツはスマートフォンゲームでしたが、台湾を訪問する前に参加したチャイナジョイでの出展コンテンツが圧倒的な資金投入とマーケティング主導で開発されていたのとは異なり、台湾のそれは見た目のハデさは無いものの、日本のゲームファンが好むと思われるテイストの良質なコンテンツを多く試遊体験することができました。

ゲームに登場するキャラクターも無国籍なもので、チャイナジョイで感じた「いかにも中国テイスト」というものとは一線を画するものでした。

個人的にとても良く出来ていると思った台湾ゲームは、シューティングゲーム“LIGHTNING FIGTER2”と、音楽ゲーム「陽春白雪(Lyrica)」でした。

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“LIGHTNING FIGTER2”はすでに日本語にもローカライズされていますので、気になる方はダウンロードしてみてください。

「LIGHTNING FIGTER2」をダウンロードする

今回TGDFに参加して、TGDF事務局への取材や現地の開発者の事情などの概要を把握することができ、彼らが日本のゲーム業界関係者に対して敬意を持って接していること、今以上に協力関係を構築したいと思っていることがよくわかりました。

時間はかかると思いますが、東京ゲームショウ、TGDF、そして例年1月に開催される台北ゲームショウなどでの、日台の継続的な連携と相互の展示会への協力体制が求められていると感じました。

国と国のお付き合いを称して「隣人」という表現を使うケースがよくあります。

日本にとっての隣人として真っ先に浮かぶのはお隣りの大韓民国(以下:韓国)かもしれませんが、ゲーム産業の場合、パソコンネットワークゲームを中心にゲームが普及した韓国と、コンシューマーゲームを中心に発展した日本の環境は若干異なります。・・・とは言え、数多くのネットワークゲームやスマートフォンアプリ・ゲームなどもあり、「隣人」との関係性は良好と言えます。

では台湾という「隣人」との関係性はどうでしょうか。

国土の規模の関係もあるかもしれませんが、我々日本人はメインランド・チャイナ(中国本土)に目が向きがちになります。

しかし、御案内したように台湾には日本人にフィットした良質なコンテンツも多く、また親日的な国民性もあり、コニュケーションやコンテンツの流通は双方にとってプラスになるのではないでしょうか。おそらく台湾ゲームは日本語版のローカライズを丁寧に行えば、今まで以上に支持される可能性を秘めていると思います。

台湾での忘れ物

遡れば、徐々に記憶は風化しつつありますが、2010年前後のことです。

当時経営していた株式会社デックスエンタテインメントにてプロデュースした「アルテイル ラヴァート戦記」(以下:アルテイル)を、台湾ガマニア本社とライセンス契約をし、配信をしてもらったことを思い出しました。

今年夏に訪台するにあたって、そのライセンス契約で御世話になった、ガマニアの経営陣の一人、william chen(ウィリアム・チェン)さんに10年ぶりに会えないかと思っていました。

ウィリアム・チェンさんは、「アルテイル」のポテンシャルを評価し、台湾での配信を率先して進めてくれた良き隣人の一人でした。フェイスブックを通じて繋がってはいましたが、彼には対面したうえで、あの時のお礼を言うべきだと思っていました。

若干緊張しながらメッセージを送りましたが、突然の連絡にも関わらずウィリアムさんは私の為に快く時間を作ってくれ、社内を案内してくれた上に、ランチをしながら双方の近況を共有し合うという貴重な時間まで演出してくれました。その翌日にはインディーズゲームのクリエイターたちのショウケース的なミックスパーティーにも招待してくれました。

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現在ウィリアムさんはガマニアの経営からは退いてWeBackersというクラウドファンディングサービスを運営する関連会社を経営していました。お互いに立場は変わりましたが、約10年の時を超えても歓待してくれました。

ガマニア本社を後にするとき・・・

「黒川さん、次は10年後じゃなくて、もっと早く台湾に来てね」

と笑顔で送り出してくれました。

ほとんど手探りで台湾を訪れ、地図を片手にガマニア本社を探し、ウィリアムさんと面談したのが10年前。そのときから時間は大きく過ぎてましたが、お互いの信頼は今も色あせてはいませんでした。

もう一つの中華・台湾 台湾のゲームとヒトの安心感、日台連携の可能性:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第7回

台湾の若いゲーム開発者、たウィリアム氏らとの交流は、台湾と日本のより強い関係性構築の可能性を感じさせるものでした。日本と台湾の人々の交流が今以上に進むことはもちろんですが、双方のコンテンツとクリエイターの交流のための力を注いでいきたい、台湾のTGDFと日本の東京ゲームショウを経てその思いを新たにしました。

もっと多くの日本のゲームファンに、台湾ゲームに触れてもらえればと思います。
まずは2019年1月、皆さんも私と一緒に、良き隣人の開催する台北ゲームショウ参加しませんか?

台北ゲームショウ公式サイト

著者:黒川文雄
1960年・東京都出身
音楽や映画映像ビジネスの後に、セガ、コナミDE、ブシロード、NHNJapan(現在のNHNPlayart+LINE)などゲーム関連企業でゲームビジネスに携わるエンタメ界の「グラン ドスラム達成者」。
現在はジェミニエンタテインメント代表取締役と黒川メディアコンテンツ研究所・所長を務め、メディアアコンテンツ研究家としてジャーナリスティックな活動も、さらにエンタテインメント系勉強会の黒川塾を主宰。
プロデュース作品に「ANA747 FOREVER」「ATARI GAME OVER」(映像)「アルテイル」(オンラインゲーム),大手パブリッシャーとの協業コンテンツ等多数。オンラインサロン黒川塾も開設。
著書:プロゲーマー、業界のしくみからお金の話まで eスポーツのすべてがわかる本