「eスポーツ」ってどうなの・・・・?という話:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第8回

 黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 
  公開日時 

著者:黒川文雄

かつてゲーセンで対戦格闘ゲームが盛り上がっていたことを御存じだろうか?
1990年代の前半、カプコンがリリースした「ストリートファイターⅡ(以下:ストⅡ)」(1991年1月導入)がゲームセンターを席巻した。

「eスポーツ」ってどうなの・・・・?という話:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第8回

それが俗に言う第一次対戦格闘ゲームブーム。

それまでも「対戦格闘(ビデオ)ゲーム」はあったが、技の多様性、映像演出、ゲーム性、世界観、どれもが、それ以前のものとは別格のゲームだった。そして、そこに打って出たのはセガ・エンタープライゼス(現在のセガ・ゲームス)第二AM研究開発部が開発した「バーチャファイター」だった。

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「バーチャファイター」が「ストⅡ」とは異なったのは、3次元のコンピュータグラフィックスを用いたリアル志向の技のアクションとグラフィックテイスト、そしてゲームがプレイヤーに与える「インパクト」だった。

それはよく「痛い」ゲームだという褒め言葉で称された。
打撃が入るたびにその痛みをプレイヤーが疑似的に感じるような完成度だったということだ。

また「バーチャファイター」が「ストⅡ」ブームのなかで徐々にそのポジションを確立していったのは、メディアを経由して情報を常にリリースし、開発者インタビューを実施、更に市井のプレイヤーの目線でフォーカスし、ゲームセンターを中心にコミュニティを形成することに成功したからではないかと思っている。

それらの複合的な要素が複雑に絡み合って、「新宿」「池袋」「渋谷」、もちろん地方にも「バーチャ鉄人」が存在し、打倒「鉄人」を合言葉にゲームを通じて活性化できたことが大きな要因だったと思う。

あのブームから四半世紀が経った

それらのブームの起点を1993年に設定すると、2018年の現在、すでに25年、四半世紀の年月が経過した。

最近とあるゲームハードを取材する機会に恵まれたが、立ち会った広報の担当者は1994年のハード販売当時2歳だったと聞いて驚いた。まあ、しかし、よく考えてみればこちらも相当年を取ったということである。このように代替わりすることで、また新しい何かが生まれると言うことを私たちは常に意識しなければいけないだろう。

さて、今回のコラムは自身の体験に基づき、eスポーツの現状を過去と比較しつつ、以下の3つの点から考察してみたい

1.eスポーツプロゲーマー
2.eスポーツパブリッシャー(つまりゲームメーカー)
3.お客さん(購買者であり、観客候補であり、プロゲーマー候補)

この3つである。ではまずeスポーツプロゲーマーに関して感じることだ。

1.eスポーツプロゲーマーに接してみて思ったこと・・・

2018年初から取材を通じてeスポーツプロゲーマーの話を聞く機会を得た。それらを踏まえてeスポーツプロゲーマーを取り巻く今の環境を一言で言うならば、恵まれていると思う。

前章で述べたような(25年前とは)環境が大きく異なっている。

かつてのゲームの名手たちは、その場所ごとのある種の限られたコミュニティ、ローカルヒーローだったものが、今はコンテンツごとに日本規模、世界規模の展開スケールになった。

ご存じのように毎日にようにeスポーツに関する新しい展開がリリースされている。また、それぞれのコンテンツごとの予選や中小規模から大規規模大会までその幅は拡がった。

しかしまだ足りないのは、eスポーツに関わるプロゲーマー、チームなどの広報宣伝的なスタンスではないかと思う。具体的に言えば、彼らの人物像や考えていることがなかなか見えてこないことにある。つまり、プロゲーマーを中心としたファンコミュニティの醸成はまだ足りないのではないかと思うことがある。

もちろんそれらができているプロゲーマーもいるし、チームもあると思うが、それはあくまでも少数派ではないだろうか。もっと、発言の機会が与えられるべきだし、それぞれが発信する努力を続けるべきだと思う。

私がプロゲーマーに取材した過程であった出来事では、とある選手の取材をマネージメントサイドに打診してもまったく返事がもらえないというケースがあった。理由がちゃんとあるのならば、説明を果たさないと選手自体とマネージメントサイドの信頼性を損なうのではないかということがあった。

プロゲーマーサイドからの情報発信やコミュニティ作りは、メリットはあれど、デメリットはないはずである。さらなるファンや一般層へのリーチを促進して欲しいと思う。

2.eスポーツパブリッシャー(つまりゲームメーカー)を取材して思ったこと・・・

こちらはもっとシンプルだ。

それぞれのメーカーは、「今はまだ、なんとも言えないが、みんなやっているから早めにやっておこう」という感触を持っている。

日本のビデオゲームは海外からの業務用ゲームマシンから端を発し、国内で独自に開発した「スペースインベーダー」などを皮切りに、業務用ゲーム、家庭用ゲーム機、ガラケーゲーム、スマホゲームという進化を遂げてきた。

一方、海外はオンラインネットワーク、ネットワークゲームからの発生したカルチャーである。

そのあたりの温度差は大きく、日本のゲームメーカーの収益の中心はやはり家庭用ゲームコンテンツの販売比重がまだ大きい。

しかし、世界市場を見れば、それが縮小傾向にあることも明らかで、それを補う可能性もあるものがeスポーツとしてのゲームコンテンツであり、それらをブームアップすることで得られる収益として位置づけていることだろう。

かつてはゲームセンターや、そこに集うコミュニティ単位などで独自の裁量で開催されていたゲーム大会も簡単には開催ができなくなった。それらはある意味では野放しではあるものの、コンテンツや参加者の底上げに大きく寄与していた。

ゲームメーカーによって見解は異なるが、ある程度の規模でゲーム大会を開催するためにはある一定の権利料を徴収するケースがある。これは重要なことだが、ローカルで育成され大きく実ったゲ-ム人口を減らすことに繋がるのではないかという懸念がある。このあたりはバランス感覚が求められるのではないだろうか。

この件に関しては、統合的なルールの策定が今後のeスポーツの活性化促進には重要な要素となるだろう。

「eスポーツ」ってどうなの・・・・?という話:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第8回

お客さん(購買者であり、観客候補であり、プロゲーマー候補)を取材して感じたこと

最後は自分自身も含めてのお客さんの目線としての感じたことだが、前章で述べたように、これからのゲーム産業はしばらくの間、「踊り場」を迎えることになると思う。その踊り場とは、従来型のコンテンツ販売モデルから、eスポーツのようなライブコミュニティビジネスに変換するタイミングを迎えているということだ。

個人的な経験則で言えば音楽産業のメディア販売ビジネスは衰退したが 、ライブエンタテインメントや関連するマーチャイダイジングや一部のサブスクリションモデルは成功している。またかつてのビニール盤のレコードビジネスなどはむしろ徐々にマニアの幅を広げているという。

おそらくゲームビジネスもこのような音楽産業と類似した過程を経て変化を遂げていく過程にあると思う。そのためには時間が必要だ。

むやみやたらに顧客が付いてこない中でメディアやメーカーが生き急いでも「急いては事を仕損じる」ということになりかねない。昔の人は良く言ったものだ。

あくまでも顧客になりたい、または観客としてスーパーなプレイを観たい、プロゲーマーになって賞金王になってみたい、・・・などの様々な欲求があってこそ、そしてそれらが一定の割合でかなえられることが重要だと思う。

eスポーツの輝かしい未来のために・・・

こういうことを書くと、面倒くさいヤツだと思われるかもしれないが、今のeスポーツのシーンはこのあたりの要素に触れたものは少ない。むしろ全面的に賛成というトーンが多い。

私自身もこのeスポーツがどのように成長するかが、この先20年のゲーム産業の大きな転換と成長をかけたビジネスチャンスだと思っている。

従来型のハードウェア(家庭用)ありきのビジネスモデルが全くなくなることはないが、その比率は徐々に薄れていくのではないだろうか。スマホベースのコンテンツも同様に思う。これからもスマホというデバイス自体が時代の変化と進化とともに形を変えてゆくことだろう。

ちょうどこの原稿を仕上げている最中の11月26日に、黒川塾64を開催した。今回のテーマは「ゲーム産業 あれから20年、これから20年」というもので、サイバーコネクトツーの松山洋さん、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一さんをゲストにお招きした。

トークも終盤に差し掛かり、これからの20年を予測するという話になった。その時に松山さんが言った内容が印象的だったので抜粋する。

「eスポーツ」ってどうなの・・・・?という話:黒川文雄のエンタメSQOOLデイズ 第8回

「自分が少年時代のこと、任天堂からファミコンが出て、そのあとスーファミが出て、任天堂のゲームとハードのすごいムーブメントは一生続くんじゃないかと思った。でも、そのあと、プレイステーションが出て、ゲームがCD-ROM化され、グラフィックが進化し、ポリゴンのキャラが動くようになった。プレイステーション2は全世界で1億台以上を販売したハードとして歴史を作った。 まさかこんな時代が来るとは・・・と思った。でも、そうこうするうちに、任天堂がDSとWiiをリリースして再び返り咲き、今度はどうなるかと思ったら、まさかのスマートフォンゲームになってしまった。・・・もうかれこれ20年この業界にいるけど、どうなるかわからないし、1強体制は成りたたない」
という。

eスポーツという新しいコミュニティビジネスを前にして、ゲーム産業は大きな構造改革の真っただ中にあることは間違いない。常に変わり続ける世の中に対応し、柔軟に変わって行けるかという点が求められている。

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著者:黒川文雄
1960年・東京都出身
音楽や映画映像ビジネスの後に、セガ、コナミDE、ブシロード、NHNJapan(現在のNHNPlayart+LINE)などゲーム関連企業でゲームビジネスに携わるエンタメ界の「グラン ドスラム達成者」。
現在はジェミニエンタテインメント代表取締役と黒川メディアコンテンツ研究所・所長を務め、メディアアコンテンツ研究家としてジャーナリスティックな活動も、さらにエンタテインメント系勉強会の黒川塾を主宰。
プロデュース作品に「ANA747 FOREVER」「ATARI GAME OVER」(映像)「アルテイル」(オンラインゲーム),大手パブリッシャーとの協業コンテンツ等多数。オンラインサロン黒川塾も開設。