【前編】PokémonGOの1年3ヶ月-熱狂のリリースと社会問題化-PokémonGOとは何だったのかを振り返る

 コラム 
  公開日時 

 著者:岡安 学 

PokémonGOがアメリカとオーストラリアでローンチしてから1年4ヶ月、日本でのローンチから1年3ヶ月が経過しました。全世界で空前絶後の大ヒットで社会現象にもなりました。

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すでにオワコンとも言われる反面、2017年8月9~15日に開催された横浜のリアルイベントでは200万人ものポケモンファンが集まるなど、コンテンツとしてのポテンシャルの高さは未だ衰えていません。

この記事ではPokémonGOのローンチから現在までの軌跡を振り返りつつ、PokémonGOとは何だったのかを考えていきたいと思います。

【前編】PokémonGOの1年3ヶ月-熱狂のリリースと社会問題化-PokémonGOとは何だったのかを振り返る

PokémonGOはナイアンティックと株式会社ポケモンが共同開発した位置情報ゲームです。
ナイアンティックはPokémonGOの前に同じく位置情報ゲームの『Ingress(イングレス)』をリリースしており、そこから得た位置情報ゲームのノウハウをポケモンのIPと組み合わせてできたのがPokémonGO。
そんなPokémonGO誕生のきっかけは、Googleのエイプリールフールイベントで行われた「Pokémonチャレンジ」でした。「Pokémonチャレンジ」はGoogleMAP上に隠れたポケモンを探して集めるという、2013年のエイプリルフールに実施されたジョークイベント。ポケモンをたくさん集めたユーザーをGoogleに入社させるというウソイベントですが、これをきちんとゲームにしたのが「PokémonGO」というわけです。

PokémonGOは2016年7月6日にアメリカとオーストラリアでローンチされるや否や大ヒットとなり、日本では3週間遅れの7月22日にローンチとなりました。
日本のIPであるポケモンだけに、日本のローンチの遅れは日本での人気に水を差すとも思われていましたが、その間に「内閣サイバーセキュリティセンターからPokémonトレーナーのみんなへのおねがい♪」などのマナー作りや、アメリカからの情報やいつローンチされるのかとい期待感が広告効果に繋がり、ゲームをあまりやらない一般層にも浸透することになりました。
結果的に日本でも爆発的な人気と共に開始されることとなったわけです。

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人気の影に無法プレイヤーによる事故・事件も

絶大な知名度とシンプルなゲームシステムにより、多くのユーザーを獲得したPokémonGOですが、単に人気ゲームという以上の社会現象となった要素がいくつかありました。

そのひとつが課金アイテム「ルアーモジュール」の存在です。ルアーモジュールは、普段はアイテムを獲得する拠点として存在しているポケストップに使用することでポケモンの出現頻度を上げるアイテムですが、この効果は自分だけでなく、そのポケストップを訪れた人全員に効果があります。
そこに目をつけたのが、近隣にポケストップがある飲食店です。近隣のポケストップにルアーモジュールを挿すだけで集客効果が見込めるという噂がたち、実際にルアーモジュールで売り上げが上がった店も出てきました。

ゲーム内のアイテムが実際の集客に役に立つという事で、繰り返し成功例がニュースになりました。

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次の要素はポケモンの巣による効果です。
PokémonGOではルアーモジュールで出現させるポケモン以外に、自然発生するポケモンがいます。その自然発生するポケモンには、ある程度ランダムに出現するものと、特定の場所では特定のポケモンが出やすくするものがあります。

後者がいわゆる「ポケモンの巣」。レアなポケモンが集まるポケモンの巣にはPokémonGOユーザーが大挙して訪れました。
上野恩賜公園のミニリュウや新宿御苑のピカチュウ、お台場のラプラスなどは有名ですので記憶にある方もいるのではないでしょうか。
この「ポケモンの巣」は周辺に経済効果をもたらすと共に、一部のPokémonGOユーザーのマナーの悪さも目立ち、PokémonGOをプレイしながら運転をする人も出てくるなど大きな問題になりました。

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こういったPokémonGOユーザーのマナー違反による事件、事故の報道から、一部の人たちはPokémonGOを敵視するようになりました。
このようなマナーや法令を遵守しないプレイヤーはPokémonGOプレイヤーのごく一部でしたが、PokémonGOの注目度が高いこともあり、マスコミやさまざまな団体に注目され、叩かれやすい状況になってしまったのは仕方がないのかもしれません。

外へ出て、人と人が出会えるゲーム

このような社会からの批判を浴びる中、それでもPokémonGOを運営し続けたのはジョン・ハンケ氏の理念があったからではないでしょうか。
彼の理念は「人を外に連れ出し、人と人を出会わせること」です。

Ingressではゲームでありながら人を外に連れ出したうえ、リアルイベントでさまざまな人が出会う機会を創出しました。またゲームによる社会貢献も実現しており、例えば岩手の地域振興として観光と復興を目的としたイベントを開催したこともありました。

PokémonGOも同様に、2016年12月には石巻市を中心にレアポケモンのラプラスの出現頻度を上げることで石巻市の復興に協力しました。このイベントで石巻市を訪れた人の数は10万人を超え、経済効果は20億円とも言われています。
ほかにも2017年3月に熊本地震の復興を目的にレアポケモンのカビゴンが頻出するイベントを開催されました。

実際の災害現場に人を集め、その現状を見てもらう。このようなイベントを行えるのは位置情報ゲームならではなのではないでしょうか。
石巻市も熊本も震災からしばらく時間が経ち、ある程度復興の兆しが見えた時に観光客を増やす、という施策になっているは非常に意義深いことです。これはいわゆるボランティアや復興事業と違う価値を持つものではないでしょうか。ともすれば、震災のことを忘れてしまいがちな時期に、もう一度思人を集められるというのは非常に重要なことです。

イベントインフレの日本のソーシャルゲームと
真逆のゆったり感

少し話をPokémonGOのゲーム自体に戻したいと思います。PokémonGOがリリースされた当時はいわゆる『ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ』に出現する、いわゆるカントー地方の151匹のPokémonの中から、メタモンと伝説のポケモン(サンダー、ファイヤー、フリーザー、ミュウツー)、幻のポケモン(ミュウ)、地域限定ポケモン(ケンタロス、バリヤード、カモネギ、ガルーラ)を142匹(カモネギはアジア限定なのでゲット可)のみが出現していました。
ローンチから3ヶ月はほとんどゲーム内での動きはなく、毎週のようにイベントや新キャラクター、新カードが登場するのが当たり前だった日本のソーシャルゲームに慣れていた人は、物足りなさを感じていたようです。
そんな状況下で初のイベントのハロウィンイベントが開催されます。特定のポケモンが出現しやすくなるイベントで、ハロウィンイベントでは、ゴースト系のポケモンが多く出現しました。この特定のポケモンが出現しやすくなるイベントは今後も定期的に開催され、その中にはレアポケモンの出現することもあり、図鑑集めをするには格好の機会となっています。

【前編】PokémonGOの1年3ヶ月-熱狂のリリースと社会問題化-PokémonGOとは何だったのかを振り返る

その後メタモンの出現、『ポケットモンスター金・銀』に登場するベビーポケモンがタマゴから孵るようになるなど、定期的に新要素が加わるようになりました。それでも毎週のように燃料が投下されるソーシャルゲームに比べれば落ち着いた印象で、イベントに追われてゲーム自体が嫌になってしまうような人にとっては、ゆったりとしたペースで遊べるのが合っていたようです。
その証拠に、一度はオワコンと言われもしましたが、結果として今でも続けてプレイしている人は多く、しかも全世代で遊ばれている数少ないゲームとなっているわけです。

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後編へ続く

著者:岡安学(オカヤスマナブ)
デジタルライター/Allaboutデジカメガイド
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。
Twtter:@digiyas