「中国ゲーム関連企業向け、日本ゲーム市場と商習慣説明ウェビナー 日本企業へのアプローチのコツ」レポート

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 著者:シェループ 

2021年5月6日、ZOOMウェビナー「中国ゲーム関連企業向け、日本ゲーム市場と商習慣説明ウェビナー 日本企業へのアプローチのコツ」が開催されました。

「中国ゲーム関連企業向け、日本ゲーム市場と商習慣説明ウェビナー 日本企業へのアプローチのコツ」レポート

この記事では、ウェビナーの内容を要約してお届けします。
尚、ウェビナーの内容はYouTube動画でもご覧いただくことができます。

ウェビナー開催の趣旨

近年、中国発のゲームタイトルは日本国内でも好評を博すようになり、併せて日本のゲーム企業へのビジネスの提案を検討する中国ゲーム企業が増えつつあります。

しかし、中国企業がいざ日本企業に連絡を取ってみても返信が全くなく、そのままお流れに終わってしまうケースも少なくありません。

なぜ上手くいかないのか?

その分かれ道になる原因の一つが、日本の企業独自の商習慣への理解の有無です。

このウェビナーでは、そんな日本の独自の商習慣を2021年現在の日本ゲーム市場の最新動向と合わせ、登壇者であるSQOOL代表の加藤、QooApp Limitedプラットフォーム&パブリッシング事業責任者仲 建豪(ちゅう けんごう)氏が解説しました。主要トピックは「日本ゲーム市場のトレンドについて」、「日本企業の商習慣」の2点です。

日本ゲーム市場のトレンドについて

まず2020年から2021年5月現在までの日本ゲーム市場の動向が解説されました。

2020年は新型コロナウィルス「COVID-19」感染拡大の影響による自宅待機、「ステイホーム」が呼びかけられた影響もあり、日本国内ではゲームの売上が家庭用、モバイル共に著しく拡大しました。

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取り分け注目は家庭用(コンシューマ)ゲーム機。2020年は前年度の2019年と比較し、国内市場が10%以上の伸びを見せています。前年比で家庭用ゲーム市場がハード、ソフト共に前年比で伸びたのは、Nintendo Switchが発売された2017年以来、3年ぶりであることが紹介されました。

同様にモバイルゲーム市場も拡大。元々、日本では大きく市場が伸びていましたが、2020年もその流れを踏襲した形になりました。特に伸びたのは「モンスターストライク」、「Fate/Grand Order」、「パズル&ドラゴンズ」などの大型かつ、著名なタイトル。また「荒野行動」、「マフィア・シティ-極道風雲」の中国タイトル2作も6位と10位にランクインしました。

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※画像は「ファミ通モバイルゲーム白書2021」より

「荒野行動」はスマートフォンで「PUBG MOBILE」や「荒野行動」を遊んでいた層、特に今までFPS/TPSを遊んでいなかった女性層を取り込んだことが躍進の要因の1つになったのではないかと分析され、2021年になってからも人気は継続中。

「マフィア・シティ-極道風雲」も積極的なモバイル広告の展開でユーザー数を拡大させています。これは日本の中でも特徴的な手段を用い、ビジネスを展開した例とされますが、詳細は時間の都合で省略となりました。

日本モバイルゲーム市場は新型コロナウイルスの影響で拡大

話題は日本のモバイルゲーム市場全般に戻り、日本のスマートフォンユーザーのゲームプレイの傾向がグラフを用いて紹介されました。

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※画像は「ファミ通モバイルゲーム白書2021」より

上の画像の「図①」からわかるように、2019年と2020年を比較すると、2020年は「モバイルゲームのプレイ頻度(※1ヶ月全体)」は多少低下しましたが、1日当たりのプレイ時間は「図②」の通り大きく上昇。これは2020年は一度アプリを起動すれば、長く遊び続けていることを表したもので、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、在宅時間が増えたのが原因と推察されます。

それ以外ではYouTube、Tiktok、Netflixなどの長時間楽しめる動画コンテンツにユーザーが集まった影響も受けている模様。しかし、全体としてスマートフォンユーザーのゲームへの接触時間は増大。比例して売上も伸びているのが、今の日本のゲーム市場の状況となっています。

また「図③」の通りゲーム内の有料コンテンツ、定額サービスへの課金の意識にも変化があったことが紹介されました。

日本国内において、主にスマートフォンゲームでは無課金でどこまで強くなれるかに挑むユーザーが多く、現在も相当数存在します。しかし、プレイ時間と接触時間が伸びたことで、ゲームの中で強くなりたいなどの自己実現をしたい意欲が増し、そのために課金しても良いと判断する人が増えてきたとのこと。

そんな変化が生じつつある日本のモバイルゲーム市場に最近、大きなヒット作として「ウマ娘 プリティーダービー」が登場したことも中国ゲーム企業に紹介されました。2021年5月7日現在、日本国内では記録的な大ヒットになっており、配信・開発元であるCygamesの親会社サイバーエージェントは、通年の利益目標を2021年の第二四半期で達成してしまいました。

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なぜこれほどの大ヒットに?それは「艦隊これくしょん」に象徴される擬人化、競走馬を美少女化する手法もさることながら、AIナレーションの精度、ネタ元の競走馬に関する小さなエピソードの緻密な再現といった作り込みの凄さにあると解説。それらが高く評価され、競馬ファンに限らず、競馬への興味が無い新規層を獲得するに至っているとのことです。どれほどの大ヒットになっているかは、売上の面で2、3位のタイトルと比べ、3倍もの大差を付けていることからも明らかです。

このウマ娘のエピソードはウェビナーに参加した中国企業から大きな関心を持たれ、複数の問い合わせがあったそうです。

ハイパーカジュアルゲームは日本でもチャンスあり?

また、2021年現在のランキングには「ハイパーカジュアルゲーム」の姿も。

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かつては記号が動くだけのような見た目もゲーム性もシンプルなタイトルが大半を占めましたが、現在はハイパーカジュアルゲームと言えどもデザインされたものが主流になり、それらが日本でも受け入れられるようになってきています。実際に日本ではアニメ的な絵柄を始め、何らかのデザインが入っているものが好まれる傾向にあるため、徐々にハイパーカジュアルゲームが、デザインのついたカジュアルゲームへと回帰しつつある状況とのことです。

一例で北京のディベロッパーが日本のディベロッパーと組んで開発したハイパーカジュアルゲームは、日本での収益性が最も高かったとの報告が出ています。

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現状、サンプルが少ない関係で判断は難しいようですが、日本に合わせたハイパーカジュアルゲームを作り込むことにより、大きな収益を獲得するチャンスは残されているようです。

日本の家庭用ゲーム、パソコンゲーム市場

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家庭用(コンシューマ)では現在、Nintendo Switchが大変な人気で、2021年5月7日現在では「モンスターハンターライズ」が大ヒットしています。しかし一方、肝心の本体が品薄で、店頭でなかなか購入できないことが問題になっています。2020年末に発売されたPlayStation 5も同じで、2021年現在も店頭で普通に購入するのが困難になっています。

これは在宅時間の拡大で購入したいと思う人が増えたこと、そして転売問題の影響が大きい模様。特に転売の問題は深刻で、本体を買い占めてフリマアプリで売って儲ける人が多くいる関係で、本当に欲しい一般のユーザーに届かない悪循環が生じています。状況の改善は2021年現在も見られず、出荷台数の増加、転売に対する何らかの対策が打たれるかなどの動向が注目されています。

ちなみに2020年の家庭用ゲーム機の販売ランキングは1位に「あつまれ どうぶつの森」、2位に「リングフィットアドベンチャー」、3位に「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」。いずれもNintendo Switchタイトルです。しかし、SONYもグループとして過去最高益を達成しており、特に世界展開を見据えたタイトルが好調です。

対照的にパソコンゲームは、2020年現在も日本国内の市場規模は小さめ。政府機関の調査によればパソコン普及率は80%ぐらいある半面、日常的な使用率は20%程度と思われ、あまりパソコンでゲームを遊ぶ習慣が根付いていない状況です。

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それはPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」のアクティブユーザー数にも現れており、世界のSteamの月間アクティブユーザー数が約1億人なのに対し、日本国内はわずか約190万人。国内のスマートフォンのゲームユーザーが3000万人から4000万人もいることを踏まえれば、いかに少ないかが分かります。

しかし新型コロナウィルスの影響でノートパソコンの出荷台数は増加傾向。日本国内では2020年にノートパソコンの出荷台数が過去最高を記録しています。今でこそ市場規模は小さいものの、今後、パソコンでゲームをプレイする人が増える見込みは十分にあり得るようです。

同様にeスポーツ市場もパソコンのゲームユーザーが少ないことに加え、新型コロナウイルスの影響でオフラインのイベントが開けない影響などで伸び悩んでおり、2020年でも市場規模は約66億円。2023年には150億円になると言われていますが、世界に比べると圧倒的に小規模です。それでも東京メトロが地下鉄駅内のスペースをeスポーツ用の施設へと改築するなど、大手企業の参入は相次いでいて、拡大への動きは少しずつ起きています。

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それでも本格的に立ち上がって来ないのにはゲーム、アニメに対する日本国内における社会的地位の低さも影響しているのではないのかとコメント。ゲームは人格の形成を阻害するのではとの偏見、ゲームはスポーツなのかスポーツじゃないのかという本質的ではない議論が拡大の妨げになったと考えられます。ちなみに中国、台湾もこのような偏見、議論はある模様。

明るい兆しとして「Apex Legends」のヒットでFPS/TPSのプレイヤーが拡大傾向にあり、2022年には「スプラトゥーン3」などの話題作発売も控えています。こういったタイトルが浸透するのと合わせ、市場は成長していくのではないのか?

そんな将来への期待を紹介する形で、本トピックは締めくくられました。

日本企業の商習慣

続いて今回の本題、日本企業の商習慣に関する解説。

日本のゲーム企業にビジネスの提案をしたい!連絡を取りたい!
それを検討する中国のゲーム企業が増えつつあるのは冒頭の通り。

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しかし、なぜか送ったメールが返ってこない。
そもそも、返ってくること自体が稀なことであるとすら言われます。

なぜ、良い提案をしているはずなのに返ってこないのか?その理由はシンプルに、日本人は知らない人から突然送られてきたメールを「怪しい!」と思ってしまうため。また、実力のある会社の場合、世界中からメールが来ており、その多数の中のひとつになってしまうことから、見落とされてしまいやすいようです。

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日本流の丁寧な紹介

さらに大きな理由の一つは日本人がシャイ(恥ずかしがり屋)であること。日本人はビジネスの話をいきなりされるのを苦手とし、さらに面識もないような人の話は聞く気になりにくいのです。

これは決して海外企業と提携するのが嫌だからというのではなく、文化的背景や、また過去にこの習慣で経済が上手くいった経験があることなどに起因しています。それに従ってくれということではなく、そういう価値観が根付いた国であると理解してもらうしかないのです。

逆も然りで、日本人もまた中国に限らず、海外の企業とやり取りする際には相手の文化を理解する必要性も強調されました。

さて、では具体的に中国企業が日本企業にアプローチするにはどうすれば良いのでしょうか。

まず前述の通り、日本人はいきなりビジネスの話をされるのが苦手。そのため、直前に接触の機会を作るやり方が紹介されました。最も効果的なのは東京ゲームショウなどのイベントで、そのような場を設けたり、チャンスを掴むことですが、現在は新型コロナウィルスの影響による渡航制限で困難な状況。ゆえに共通の知人を通して紹介してもらう、あるいは日本国内にいる中国人に仲介してもらう形で接触のきっかけを作ってもらうのが良い手であるとのことです。

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ただし、日本と中国とで紹介に違いがあることに注意が必要となります。基本的に日本での紹介は”間”を挟むのが伝統。いきなりメール、チャットから連絡すれば「なんでこちらを知っているんだ?」と驚き、警戒されかねません。なので、まずは仲介していただく方に「こういう用件で紹介してほしいという人がいる……」と相手に伝え、紹介の許諾をとってもらった後連絡すれば、そう思われ難くなる。

紹介してもらえる知り合いがいない場合は直接連絡してみるのもひとつの手とのこと。ただし、コピペの定型文や、「儲かります」とだけ書かれたものはまず読まれません。SNSでコメント(リプライ、ダイレクトメッセージ)を沢山送り付けて絡みまくるというのも、まずよい反応が返ってくることは期待できません。

結局のところ、大事なのは丁寧に接触すること。日本人だからと過度に心配しなくて良いものの、基本的にシャイですので、それを理解した上で、ちょっとずつ関係を育みながら接触していけば大丈夫だと解説されました。

日本ゲーム業界は日本の中では柔軟、中国との共通点も多い

そんな日本のゲーム業界(企業)はどうなのか?基本的には新しいことが大好きで、古い習慣よりも効率の良い方がいいという柔軟な商習慣であることが紹介されました。

実際に中国のゲーム市場に興味を抱いている企業は多く、ゲームの嗜好も似ているところがあります。アニメ調の作品がそれを物語っています。逆に欧州の会社の場合、例えば学校で宿題を忘れたことを面白おかしくネタにした日本製のゲームを紹介しても、そちらには宿題の習慣自体が存在しないため、何が面白いのか理解されない。

逆に日本と中国はその辺が似ているので、話も噛み合い、よい関係が築けて切磋琢磨できるかもしれないとのことです。

特にアニメファンの市場拡大は特筆すべきものがあり、QooAppの調査によれば、中国に留まらず、アジア圏以外にも波及してきているとのこと。中国製アニメも近年は日本で放送される例が少しずつ出てきており、より話題の面で接しやすくなるかもしれないとの期待と展望が紹介されました。

SNSはFacebook & Twitter

接触に用いる連絡手段(ツール)に関しては、現在の情勢を踏まえればSNSを活用すれば上手く行く可能性があるとのこと。

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ユーザーが多いのはTwitterで、ゲームファンに留まらず、個人のクリエイターから若い人まで幅広く使われています。30代以上であればFacebookをビジネスツールとして使う人も多い。他もLINEもありますが、こちらは親密な関係になってからやり取りするケースが大半とのこと。

反面、中国で主流のWeChatはほぼ使われておらず、使っている人は大抵プライベートかビジネスで既に中国と関わっている方がほとんどのようです。Skypeはそれほど使われないものの、日本でも中国でも使えるため、ビジネスが始まったらこちらでやり取りするのが多いとのことです。そのため、主にビジネスの提案が進んだ後はSkypeでのやり取りを提案すれば、以後スムーズに進む可能性が高いようです。なお、ビジネス特化型のソーシャルツール「LinkedIn」は推奨されず。その理由は、日本人は英語が苦手なので……とのことです。

日本企業、日本人がビジネスで重視していることとは?

そしてここまでの日本企業、日本人の特徴を紹介した流れから話題は、日本人が何を重視しているのかへ。

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まず接触に関しては誰かしらに紹介してもらうのが有効。またゲーム好きな人が圧倒的に多く、ゲームのの話をすれば打ち解けやすくなります。そのため、ゲームが好きであれば関係性を深めるのに有利。この共通の話題、認識があるかないかで一歩リードできるとのことです。

相性も重要。キャラクターの制作に注力しているのか、世界観を重視しているのか、機能性第一なのか。相手それぞれ傾向が異なるため、そこを理解した上で踏み込んでいくことが関係の成立を左右します。特に日本人はハッキリと言わず、態度で示してくることが大半を占めるため、いかにしてその空気を読むかが重要とのこと。この点に関してはQooAppの仲氏も「めちゃめちゃ難しい」とコメント。現に日本人はディスカッションなどで意見を戦わせることを得意としないため、いかに共通の認識を多く見つけられるかで全てが決する模様。相手が何を求め、重視しているのかを見抜く洞察力が大事とのことです。

納期などの期限重視なことにも注意が必要です。日本人は時間と予定、予算を守り、決まった通りやることを大事にします。裏を返せば決められた予定を変えにくく、イレギュラーな事態に弱い。これはゲームに限らず、国内の企業同士での取引も同様。

また、基本的に決断も中国の企業に比べると遅い。日本の場合はほとんどのことは上司に確認が必要で、そればかりか社長であっても社内確認が必要な場合もあり、多くの場合で即断即決とはいきません。なので、日本企業と交渉するときにはすぐには決定されないとの前提でのやり取りが重要になってきます。ただ、実績を示せば決断が少し早まるケースもある模様。特に大手の企業はそこを重視するため、検討資料を用意しておくことが推奨されるようです。

なお、企業も大手は保守的で決断が遅い、中小は柔軟で決断も早いが、人の少なさと経験の浅さからビジネスが発生しないことがよくあるなど、規模ごとに傾向の違いがあります。

このような傾向は、デメリットも多くありますが、例えば緻密な進行ができる、スケジュールを計算しやすいなどのメリットが有り、その特徴を理解して欲しい、ともコメントされました。

こういった日本企業の性質に対応するにあたっては、日本に自社の人を派遣したり、パートナー企業を置いておくことも重要。成功例として、中国のパブリッシャーのJoyPacは東京に担当者を滞在させたことで、スムーズなビジネス提案を行えたようです(現在は新型コロナウイルスの為中国本社に滞在中)。日本のゲーム企業が中国に展開する場合も同じですが、現地に誰か居ることが進展を早めることもある。現在は新型コロナの関係で容易に実践しにくい状況にありますが、やるだけの意義はある施策なのは間違いないようです。

ここで述べたことは、日本人にとっては当たり前かもしれませんが、中国企業の参加者からは、「中国と日本が大きく違う考え方であることがわかった」「日本へのアプローチの方法が根本的に違っていた」などの感想が聞かれたそうです。

最後に、いざ日本でビジネスを進めることが決まった際の注意点の一つとして消費税についての説明がされました。

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日本の消費税には国際取引において非常に揉めやすいポイントで、海外企業であっても国内取引であれば課税対象、しかし例外的に消費税を取らなくて良いケースもあるなど、複雑な仕組みになっています。ここは日本の取引先はもちろん、日本国内のパートナー先から国税庁に確認してもらったり、税理士や専門家に確認してもらうなどの対応方法が紹介されました。ある意味、この点もまた日本はそういう国である、との理解が必要なところかもしれません。

最終的に予定時間を大幅に超過する形になりましたが、講演はこれにて終了となりました。今後もこの話題に関しては改めて機会を設けるほか、質問があれば登壇者の加藤、QooAppさんにお気軽に連絡していただければとのことです。

SQOOLの連絡先:info@sqool.co.jp

QooAppの連絡先:bd@qoo-app.com

今も海外渡航の制限がかけられ続けている状況。かつてのように国内外のオフラインイベントでビジネスの新たな関係を育むことは困難で、SNSなどのツールを活用し接触を図ることが重要になっています。特にテキストだけで伝える場合は会話と違いニュアンスを伝えにくい難点があるため、より一層相手側の事情や文化などの理解が試されます。

少しずつ新型コロナウイルス収束の兆しも見えつつありますが、例えそれが収束した後でも国ごと細かな違いへの理解はビジネス提案の成否を左右するでしょう。それを踏まえたやり取りが定着し、互いのゲーム文化が成熟していく未来の到来をこの講演を片隅で聞いていた人間のひとりとして注目したいところです。

SQOOLのYouTubeチャンネル

著者:シェループ
新旧様々なゲームに手を伸ばしては、積みゲーを増やし続けるひよっこライター。アクションゲーム全般(特にロックマンシリーズとメトロイドシリーズ)と戦略シミュレーションが大好物。
Twitter:@shelloop