福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

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 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

東日本大震災から6年半が経ちました。震災の記憶は少しずつ薄れつつあります。

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SQOOLはウェブ上のオンラインの活動、現地でのオフラインの活動の両面で、ほんの少しだけ復興支援活動に携わっています。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

この記事は、福島の原発事故をテーマとしたVRゲームの展示イベントをご紹介しています。
SQOOL.NETとしては珍しい記事ですが、是非皆様にお付き合い頂き、お読みいただけますと幸いです。

2011年の震災発生時、FacebookやTwitterなどのSNSが社会に浸透し始めており、その発信力が注目されていた時期でもありました。そういった状況を背景に、SQOOLは主に東北の中小事業者のSNSやウェブメディアを使っての情報発信を支援してきましたが、SNSやウェブメディアでの情報発信には限界があるとも感じていました。
1つには東北の被災者の中にはSNSやウェブでの発信に慣れていない方が多かったこと、そしてもう1つには写真やテキストでは伝えられる情報の密度に限界があるということでした。

しかしここに来てVR(仮想現実)やMR(複合現実)などの技術が実用化され、それにより震災の情報をより体感的なものとして残すことができるようになってきました。

2017年9月29日(金)~10月1日(日)の3日間、東京都千代田区飯田橋の「ii-BRIDGE」で、

『【福島+VR体験】特別企画展「仮の住処」を「仮想体験」する-被災の記憶・継承と共感-』

という福島とVRとを組み合わせた展示イベントが開催されました。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考えるそのイベントに展示されていた、VRゲーム「PREMANET」を体験してきましたので、そのレポートをお届けいたします。

震災の記憶が薄れるのは自然なことです。それはそれとして過ぎた時間を受け止めつつ、少しだけ3.11を思い出しながらこの記事をお読みいただければと思います。

イベント詳細情報
【福島+VR体験】特別企画展「仮の住処」を「仮想体験」する-被災の記憶・継承と共感-

疑似体験させるVRの力「シリアスゲームとVR」

シリアスゲーム、という言葉をご存知でしょうか。

エンターテインメント性のみを目的とせず、教育・医療用途(学習要素、体験、関心度醸成・喚起など)といった社会問題の解決を主目的とするコンピュータゲーム

Wikipediaには記載されています。
日本ではまだまだシリアスゲームという言葉は浸透していませんが、欧州、特にオランダではこの言葉が浸透しており、エンターテインメント以外の分野にもゲームの技術を応用する試みが多くなされています。

参考記事
【東京ゲームショウ2017レポート】オランダブースには味わい深いタイトルが勢ぞろい!シリアスゲームの流れを汲む3タイトルを紹介!

今回のイベントで展示されていた「PREMANET」というVRゲームはオランダのチームが開発したもので、ゲーム内の仮想空間で福島原発事故後の仮設住宅を疑似体験することができます。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

福島の被災者の避難生活の状況はテレビやウェブの記事などで目にしたことがある方も多いと思います。
しかし文字や写真、音声による情報は、事実を正確に伝えることに向いている反面、感情面や雰囲気などの感覚的な情報を伝えるのには向いていない側面があります。まさに今読んでいただいているこの記事もそうですが、この文字に感覚的な情緒を込めるのはとても難しい作業です。

その点VRは「疑似体験」という優れたアプローチにより、曖昧な情報であるフィーリングを体験させ伝えるのに向いている技術です。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

VRゲーム「PREMANET」では、プレイヤーは福島の原発事故を取材する記者となり、ゲーム内の仮想空間に設置された仮設住宅に暮らす避難者にインタビューを行います。
ゲームとしては脱出ゲームのような作りになっており、プレイヤーは部屋の中にあるキーアイテムを探してストーリーを繋ぎ合わせていきます。

VR空間内の仮設住宅に入ると、テーブルが1つだけ置かれた小さな居間と半畳も無いキッチンが。狭い。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

ゲーム内のストーリーはフィクションですが、実際に仮設住宅で暮らす被災者へのインタビューを基に構成されており、非常に現実味のあるものに仕上がっています。
プレイ時間は約15分でしたが、本当に仮設住宅にいるような感覚でした。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

筆者としてはオランダの開発チームが福島の原発事故をテーマにVRゲームを開発した、ということに大きな驚きを覚えます。

ゲーム開発者の1人、Martijn Kors(マルタイン・コース)氏は、震災後津波の被害を受けた岩手県に何度も通いフィールドワークによる調査を行ってきたそうです。
しかし「福島も見るべきだ」との声を聞き、2014年に福島を訪問。他の地域が復興に向かう中、原発による被害で復興の道筋が見えない福島の状況に愕然としたといいます。

Martijn Kors氏は、パースウェイシブ・ゲーム(※社会的・教育的なメッセージを取り込んだゲーム)に学術研究を組み込んだプロジェクトを立ち上げ、その活動の中で生まれたのが今回展示されたVRゲーム「PERMANENT」。

オランダの技術者がこうして福島の記憶を残そうとしてくれていることに感謝するとともに、VRゲームの多面的な可能性を確信する体験となりました。「PERMANENT」は本当に多くの方にプレイしてほしいタイトルです。今後日本でのリリースの情報などがありましたらSQOOL.NETサイト内でお知らせします。

「PERMANENT」が展示されていたイベントは本日で終了となりましたが、SQOOLでは関連のイベントやシリアスゲームの情報について、今後も継続して発信してまいります。
VRゲームの可能性に期待しましょう。

福島がテーマのVRゲームを体験できる展示イベントが開催 ゲームは何ができるのか、新しい技術と記憶としてのゲームを考える

【福島+VR体験】特別企画展「仮の住処」を「仮想体験」する-被災の記憶・継承と共感-

イベント概要

日 程:2017年9月29日(金)・9月30日(土)・10月1日(日)3日間開催 ※イベントは終了しています
時 間:連日11:00~18:00
場 所:ii-BRIDGE(東京都千代田区飯田橋4-7-4)https://ii-bridge.com/
入場料:無料 ※カンパをお願いします
主 催:OurPlanet-TV
協 力:アイントホーフェン工科大学/アムステルダム応用科学大学/オランダ科学研究機構
助 成:オランダ王国大使館/ベネッセこども基金/LUSHチャリティバンク

お問い合わせ

OurPlanet-TV(担当:高木)
TEL 03-3296-2720
MAIL info@ourplanet-tv.org

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著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
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