ゲームの技術やノウハウを他分野へ!シリアスゲームの今とこれからについて

 コラム 
  公開日時 

 著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長) 

SQOOL.NETでは過去に何度かシリアスゲームについて記事を掲載してきました。
シリアスゲームとは、ゲームの技術やノウハウを他分野に転用し利用するゲームジャンルを指しますが、これはエンターテインメントではない分野が主となります。例えば想像しやすいところでは教育や医療などです。英単語を覚えるゲーム、などはすでに目にしたことがある方も多いでしょう。医療分野においても研修医の学習用のシミュレーションゲームなどが考えられます。ゲームの技術やノウハウを他分野へ!シリアスゲームの今とこれからについて

しかし、最近のシリアスゲームの概念はもっと拡張しており、例えば、工場の作業での管理コンソールの在り方に、ゲームののノウハウを転用する、などです。
ゲームはいかにユーザーに楽しんでもらうかがメインであるため、広く一般のユーザーにとってわかりやすいユーザーインターフェースであることが求められます。この工夫、ノウハウを業務用のシステムにも転用することで、わかりやすく、そして例えば工場の作業であればより効率的で安全な仕組みにすることができます。ゲームの技術やノウハウを他分野へ!シリアスゲームの今とこれからについて

他にも、例えばスマートフォンアプリゲームのハイパーカジュアルゲームで培ってきた、テキストでの説明をせずにユーザーにゲームの趣旨を理解させる誘導のノウハウなどは、例えば外国人に日本の社会システムを感覚的に理解させる表示に使えるかもしれません。駅の中の案内や、あるいは災害時の避難経路の表示などに転用できる可能性があります。

このように、以前は主に学習と組み合わせることで、「このゲームは学習要素もあるからシリアスゲームとも言える」という状況から、シリアスゲームは今やかなり発展した概念を持つようになってきました。
もちろん学習への転用も非常に価値が高いもので、主に子供の学習意欲を高め、勉強のストレスを軽減させることに役立つでしょう。ゲームの技術やノウハウを他分野へ!シリアスゲームの今とこれからについて

あるいは、VRによる災害避難所の疑似体験や、ストーリーをゲーム的に操作して戦争体験をすることができたり、または原始的な生命活動のシミュレーションの中に自らも一生命として行動する、など、社会、歴史、科学などの多くの分野にゲームからのアプローチが考えられます。

シリアスゲームという言葉が社会に認知され始めたのはおよそ10年ほど前かと思いますが、その頃は、ゲーミフィケーション、エドテック、などの似た言葉が混在し、「なんとなくゲームっぽい、それでいてもう少しなにか良いもの」程度の認識だったものが、ゲームの発展と、様々なシリアスゲーム的アプローチによってより具体的になってきたと感じています。ゲームの技術やノウハウを他分野へ!シリアスゲームの今とこれからについて

今後日本が世界をリードできる可能性がある1つのジャンルとしてシリアスゲームは大きな可能性があると筆者は感じています。日本はゲームの開発が得意であり、そして今ある技術を他に転用することもまた得意だからです。
この分野についてはオランダが進んでいると言われていますが、ゲーム産業の規模と先進性という意味では日本も十分にリーダーであり得るでしょう。

デジタルゲームという産業はまだ新しい産業でそれ自体が発展途上にあります。シリアスゲームもまた幼い概念でありどのような形に昇華するのかは未知数です。
しかし、エンターテインメントとしてのゲームが、その発展の中で培った技術やノウハウを社会の他の分野に活かし貢献できるのであれば、それは単純に素晴らしいことではないか、と思います。

参考動画:大学でゲーム研究!?ゲームの技術を社会に活かすシリアスゲームとは?【日大古市研究室】

SQOOLのYouTubeチャンネル

著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
いつの間にかメディアの人みたくなったことにいまだに慣れない中年ゲーマー。夜行性。
好きなゲームは「桃鉄」「FF5」「中年騎士ヤスヒロ」「スバラシティ」「モンハン2G」「レジオナルパワー3」「スタークルーザー2」「鈴木爆発」「ロマサガ2」「アナザーエデン」などなど。
著者Twitter