今年のG-Starはどうだったか?韓国最大のゲームイベントの課題とは
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
世界の大規模なゲームの展示会が、東京ゲームショウを除いては苦労しているのは皆様ご承知かと思います。G-Starはその中でもかなり苦労しているという感じがしますが、今年はどうだったのでしょうか。

2025年11月13日〜16日に韓国釜山で開催されたG-Starの様子とともに、私の所感を少し書いてみたいと思います。
今年のG-Star2025の最初の印象は、会場前のフリーエリアに出展が少ないということと、メインであるホール1のブースが少ない、というものでした。

BtoCエリアにはNEXON、Kakao Gamesなどの韓国大手のいくつかが見当たらず、「大手のための展示会」と言われているG-Starとしては本懐の一部が欠けている印象でした。

その欠けた分を補うように、ホール2の1階のほぼ全ては「Indie Showcase」という、東京ゲームショウで云う「Selectec Indie」のような、選抜されたインディーゲームが世界中から集められたエリアになっていました。

ただ正直な感想を述べると、Indie Showcaseは4日間を通して常に閑散としており、ゲーム大国である韓国最大のゲームの展示会のエリアとしてはかなり寂しい感じがしました。
これはいくつかの原因があると思いますが、
1つはG-Starそのものがやはり大手メーカーのためのイベントであり、インディーゲームブースを置いたとしても、それを集客に繋げる仕組みになっていなかったということです。

私は韓国インディーの友人何人かに事前に連絡をしましたが、
「G-StarはIndie Showcaseに通ったら参加する」
という方が多く、そしてその発表が10月末ごろと遅く、韓国のインディーゲーム界隈もあまりG-Starを重視できない感じになっていたと思います。
G-Starの公式サイトにはIndie Showcaseに出展されるタイトルの掲載がなく、私も結局Indie Showcaseに何が出展されるかはっきりしないままの参加となりました。
もっとよく調べればどこかに発表があったのかも知れませんが、少なくともインディーエリアをしっかり訴求していこう、という感じにはまだなっていなかったと思います。

もう1つの原因は、同じホール2の2階で開催されていたBoBエリアが不人気であることではないかと思います。
G-StarのBtoBへの入場チケットは200ドルと高く、その割に交流が持てる場も限られており出展側からも参加側からもあまり人気がありません。
ビジネスミーティングを重視する人は、近隣のホテルやカフェで打ち合わせを持つなど、そもそも会場に入ってこない方が効率的という感じです。
そのためホール2全体が、ホール1のついでのような雰囲気になっていました。

本来インディーエリアにはビジネス目的の方に多く訪れてもらって、パブリッシャーとのマッチングや投資の獲得などにつながる交流が起きるのが好ましく、その意味でホール2にまとめられているのではと思いますが、そのシナジーは残念ながら起きていなかったように思われます。
BtoBの活性化は兼ねてからG-Starの課題の1つだったと思いますが、そろそろなんとかしないと韓国大手ゲームメーカーが牽引するのにも限界があるでしょう。
大手のブースが並ぶホール1はホール2に比べれば盛況でしたが、それでも今年は通路が広く、つまりブース面積が少なく、週末の土日もそれほどの人出ではない、という感じがしました。

釜山の街中を見ても以前は海雲台のビーチ付近を中心に多くのG-Starの旗や看板が見られましたが、今年は少なめな気がしました。
これは出展数やクライアント獲得の成果に紐づいていると思いますが、結果としてビジネス、ゲームファンの両面での集客に苦労している感が伺えます。
世界でもゲーム先進国として知られる韓国は、国としてもゲーム産業の育成に力を入れており、東京ゲームショウなどには多くの韓国ブースが出展されました。しかし
その勢いはG-Star2025では感じられなかったというのが私の感想です。

日本から近く、日本語が話せる方が韓国の中でも比較的多い都市である釜山は、日本から行きやすい街の一つです。ここでゲームの大きな展示会が開催されることには日本にとって大きな意味があります。
毎年韓国のゲーム業界の方々と様々な交流があり、貴重な友人を得ることができます。
韓国のゲーム市場全体の状況に対する人強いをを年に1回更新することができ、韓国から見た日本の状況も見直すことができます。
今年じっくり見たIndie Showcaseには優れたゲームが多く展示されていました。パブリッシャーを探しているタイトルも多く、日本のパブリッシャー担当者の訪問先として適していると思います。

韓国には中小規模のゲームパブリッシャーが少なく、日本のゲームパブリッシャーへの期待は大きいようでした。
ホール1には大学関連のブースも多くあり、大手が出展を絞ったからかも知れませんが、これからのゲーム業界を担う韓国の学生さんから色々な話を聞くことができました。
日本の「7 Days to End with You」が好きで、韓国語をテーマにした言語謎解きゲームを作った学生さんもいました。
こういう日韓の繋がりを見られるのは本当に得難いことだと思います。

G-Starは色々な問題を抱えているようで、今の時点では「絶対に行くべき」とは言えないイベント、というのが正直なところです。
ただ私としては今後も毎年G-Starには参加して、今後のIndie Showcaseの成長や韓国大手ゲームメーカーの変遷を見ていきたいと思います。











著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)