リアルイベントは今後どうなる?東京ゲームショウ2024に期待するもの
著者:加藤賢治(SQOOL代表 兼 編集長)
コロナ禍を経て、一気にリモートの流れが進んだ日本。保守的な社会と言われる日本でも、コロナ禍によってリモートワークの有用性が見直されました。
というのは、少し前までの話で、現在は勤務形態については非リモートワークにほぼ戻っているようで、リモートが継続しているのは、もともとリモートワークを導入していたか、導入を検討していたか、あるいは極めて相性が良いか、というところに限られるようです。
筆者自身いくつかのチームをリモートワークで運用していますが、リモートワークの良い点、悪い点があるように思われます。ウェブメディアの運営や小規模ゲームの開発はリモートワークでもやり方に気をつければ十分に機能しますが、それでも物理的に集まって業務を行う方が、通勤の手間などを無視すると効率が良いのは確かです。
そのような背景もあり、商談、いわゆるビジネスミーティングもリモートだけでは十分ではないという意見も多くなってきました。これは日本だけではなく、海外も同様です。特に新規のプロジェクトや新たな取引の開始などにあたっては、一度直接会う重要性は改めて見直されています。
実際に、多くの海外のゲーム関係者が日本に来て直接会う機会も増えてきました。これは円安もありますが、時間と経費を使ってでもその方がビジネスが進むと多くのゲーム業界関係者が、特に経営層やマネージャー層が感じているからでしょう。
さてゲーム界隈はそんな雰囲気ですが、そんな中明日2024年5月24日で、東京ゲームショウへの出展申し込みが締め切られます。コロナ禍中はリアルイベント縮小の流れを受けて出展者数も絞っていた東京ゲームショウですが、徐々に回復し、昨年はコロナ禍以降初めての幕張メセ全館での開催となりました。出展者数も国内外合計787社(オンライン出展41社を含む)と過去最多でした。
この流れが踏襲されるのであれば、今年の東京ゲームショウも多くの出展が想定されます。
筆者が期待したいのは、ビジネスマッチングの促進です。東京ゲームショウには開催前に商談の予約をするオンラインの機能があり、海外のゲーム関連企業と商談を持つ機会を提供しています。日本のゲーム産業にとってこのマッチングは非常に重要ですが、まだ業界全体には浸透していないように感じます。
これは東京ゲームショウの運営側の問題というより、参加側の企業の問題で、例えば大手であれば直接のやり取りによって解決しますし、中小のゲーム事業者にとっては商談まで丁寧にセッティングするのが負荷的に難しい、という事情があります。
このような、ゲームのイベントを利用した海外との商談の促進についてのノウハウは十分にゲーム業界内に流通していないように思われ、海外事業者からも「もっと日本のゲームスタジオに会いたかった」という声も毎年聞かれます。
ゲームファンへのサービスという点では東京ゲームショウはとても優れいていると思いますが、ビジネスの促進という意味で参加側の意識とノウハウがもう少しあれば良いなと感じます。
この辺りはメディアの領分でもありますので、SQOOL.NETでも情報の補完をしていければと感じています。
eスポーツ、VR、メタバース、NFT、Web3、インディー、AIとここ5年ほどさまざまなホットワードが生まれたゲーム業界ですが、明確な次の主軸はまだ生まれていない状況です。
東京ゲームショウなどの大型のイベントの場を利用して、さまざまな商談が行われて、結果多様なコラボが生まれ、次のゲーム発展の軸が見えてくることを期待しています。